過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

どうしていまの政治って、ダメなんでしょうかと聞いた

ちょくちょく郷土史家のKさんを訪ねては、いろいろ談義する。それが学びの楽しみになっている。
86歳。著作も、30〜40冊ほどになる。いまも「村の昭和史」の執筆中。ワープロのない時代は、和文タイプライターを独学でならって原稿を打ち込んでおられた。
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Kさんと地方政治についてのやりとり。
──どうしていまの政治って、ダメなんでしょうか。
「それはなぁ、地方政治からして、まるきしダメなんだよ」
──どうして地方政治は、だめなんですか。
「これまでの村長やら町長やら、県会議員などみていると、みんな金持ちのぼんぼんばかりだ」
──たしかに。みなさん、山持ちで金持ちの人ばかりですね。
「ある人は、いまだに地元の人からぼん(坊ちゃま)と呼ばれている。大して利口じゃなくても、先生が級長に任命した。金があるから大学に行けた。もとより大地主の倅、しかも大学を出ていれば、山里の人たちは、大したもんだと思ってしまう。立候補すれば当選だ」
──なるほど、そういう人たちが政治をしてきた。でも、役所の人は、ある程度、基礎ができていたんじゃないですか。
「だめだ、だめだ。役場の職員も、だいたいが縁故採用だ。みんな勉強しておらん」
──手厳しいですね。どういう点が不勉強なんですか。
「行政というのは、法律に基づいて行うものなんだ。しかるに、そもそも、法律や条例など、まったく読んでいないんだ」
──具体的な事例がありますか。
「そうだな。かつて、山にモノレールを敷くという計画があった。議会で予算も通り、参道も整備された。いよいよ、着工するというときに、わしはその話を聞いた。
まてよ、この計画は無理じゃないか。森林鉄道などとは性質が違う。人を乗せるのだから、そもそも運輸省(いまの国土交通省)の管轄のはずだ。そのあたり、ちゃんと法的にクリアーしているのかどうか。役場に聞いてみた。そうしたら、そのことを知らなかったと言うんだ」
──そうしたら、その計画は、だめになったんですか。
「そうだ、許可が下りなかった」
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具体的な事例、年月、だれそれがどうした。どんな条文で、どういう経緯かと、具体的な事実がスラスラと出てくる。
一冊本を書くときには、100人には取材して書くという。
いまのコロナ禍については、かつてのスペイン風邪の資料を読み込んでいる。一般紙のみならず、この地域、三遠南信エリアの新聞や広報も集めては読みこんでおられる。コロナ禍の経緯だけでも、スクラップブックの高さは3メートルほどになっていた。