過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

苦労体験を聞いたりする日々

「ずっと苦労ばかりしてきた。いいことなかった。戦争で両親も亡くした。田舎に嫁いできて山仕事やら炭焼の仕事やら、働き詰め。そのうえ、目も悪くなったり、内臓もよくないし、もうだめだよ」という。Tさん86歳。
ただ、語る響きは思いつめたところはなくて、深刻ではない。そうだねえ、たいへんでしたねーと、ぼくは聞いている。
でも、いいこともたくさんあったでしょう。と話を向けると、ないない、ひとつもないよ。いつもそう言われる。
そうだねえ、がんばってきたね、というやりとり。まあ、こうしたやりとりは、ゲームみたいなものだ。
-----------------------
他の人に話をむけてみた。「Mさんはどうですか」と振ってみた。Mさんは94歳だ。
「わたしは毎日が楽しくて仕方がないの。いやだとか、にくたらしいとか、まったくないの。だって、せっかくこうして生きていられるんだもの。ありがたいことばかり。そんなふうに生きているの」と。
でも、いやなひととか、憎たらしい人と出あったりするじゃないですか。そういうことはないですか。がまんしてきたんですか、と聞いてみた。
「だって、そんな人にあったことがないもの」と。たんたんと語られる。いつも、穏やかで安定した方である。マンダラ塗り絵も、精密に美しく塗られている。
先輩にあたるMさんの話を、Tさんは、なるほどねえと感心して聞いていたのであった。デイサービスの本日の一コマ。