過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

「ゆりかごの歌」と「はにわー」

春野町には保育園がない。それで、一般家庭で保育してくれる「保育ママ制度」がある。だが、春野町に保育ママは1〜2軒しかない。そのSさんのところに迎えに行く。
Sさんのお宅に着いて、ピンポーンと鳴らす。
あかりが、わーんと泣いて出てくる。「はやく来すぎー」「もっと遊びたいのに、お父ちゃんが早く来すぎた」と叱られる。
──だって、もう暗いし、仕方ないよ。お母ちゃんが待っているから。
なだめて車に乗せる。
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片道30分かかるので、運転しながら歌おうとする。いつも「うるさいー。お父ちゃん黙ってて」と叱られる。
きょうは、「ゆりかごの歌」を歌っていたら、「その歌、もっと歌いつづけて。ずっと歌いつづけて」という。
じゃあと、歌っているとあかりが、突然、「はにわー」と叫ぶ。
意味不明だ。「こんにちわー」をへんなふうに覚えてしまったのかもしれない。
でも、近ごろ気に入っている音の響きみたいだ。
お父ちゃんは歌う。「ゆーりかごーのうたを、かーなりやーは歌うよ」。
あかりが、「はにわー」と叫ぶ。
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そんな、シュールなやりとり時間を共に過ごして、家に帰る。玄関に着く頃には、あかりは眠ってしまっている。
子どもというのは、起こすときに機嫌が悪い。泣き叫ぶ。
「わーん」と泣いて、家に入っていく。
ところが、めざすおかあちゃんがいない。きょうは研修に行っていているのだ。
「おかあちゃんがいないー」と、また泣き叫ぶ。
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仕方ないので、動画を見せる。その間は静かにしている。
寒いからといって、お父ちゃんの湯たんぽ入りのシュラフに入ってくる。
というわけで、あかりを足の上に乗せながら、パソコン操作をする。
そして、「お月さま見に行こうよ」という。リヤカーに湯たんぽ入りシュラフにあかりを入れて、川沿いの道を歩く。
ま、そんな毎日だ。
人生、思うがままにならない。そこに、まことに魂の修行あり、というところ。