過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

仏前に 新米ですよ はいどうぞ

昨年の12月からデイサービスの事業を始めた。利用者さんの生き方、暮らし方から学ぶ日。
Mさんは、大正15年生まれ。94歳。母が生きていれば、同い年。
見た目、80代、いや70代くらいにも見える。足腰もしっかりしている。歩行介助は、必要ない。

 丁寧な塗り絵をつくりあげる。さながら写経行のように無雑・無心に。料理も進んで手伝ってくださる。

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いつもおだやかな微笑み。すすんで自分のことは話をされないが、人の話を聞いて楽しそうにニコニコ笑っている。ほとんど怒りを表わさない。

 ──どうして、Mさんは、怒ったりしないんですか?

「だって、怒ったら自分が損じゃない。あとで疲れるじゃない」。

 そんなやりとりをした。

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その元気さの秘訣をみてみた。
どうも朝晩の読経にありそう。
送迎の時、部屋までお連れすることもあるが、そこに大きな仏壇がある。スイッチで扉が自動開閉する。

 朝と晩、『法華経』の一部と南無妙法蓮華経と唱える。それぞれ20分くらい。

この50年近く、まったく一日も休んだことはないという。
──すごいですね。普通の人には難しいことです。
「だって、〈おつとめ〉ですもの」。
──なるほど、〈おつとめ〉ですか。
「そうよ。〈おつとめ〉というのは、休まないこと、サボらないこと。いちどサボったら、キリがないもの」
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先日、ある雑誌にMさんの俳句が入選したのを見つけた。
「仏前に 新米ですよ はいどうぞ」

 ──ほら。この雑誌に入選していますよ。

そう伝えたが、本人は、「あら、そう?」とニコッとしただけで、とくに執着もされない。