─お月さまを見に行こう。
「うん、いいよ。行こう、行こう」
ということで、気田川沿いの堤の道を歩く。
いつものように、あかりはリヤカーに乗って、湯たんぽ入りのシュラフに包まって、顔だけだしている。
あかりは、ひとりぬくぬくしている。お父ちゃんは、すごく寒いよ。
風はびゅーびゅー吹いている。ごおーーーと、唸るようだ。
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お月さまはちょうど頭の真上。もくもくと黒い雲が出て、月の光が輝いたり暗くなったり。その変化がおもしろい。
「お月さまのとなりには、宇宙があるんだよね」
─そうだね。おおきな宇宙があって、そのなかに、太陽があって、地球があって、お月さまがあるんだね。
「お月さままで、行けないかなあ」
─あかりが大きくなる頃には、かんたんに行けるようになるかもしれないね。
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「お月さままで、高くて長ーい階段を作れば行けるよね」
─そうだね。それができたら、いけるね。でも、くたびれそうだなあ。
「きっとだいじょうぶだよ」
そんな会話をしながら、風がはげしく吹き渡る川沿いの道を歩いてきたのであった。