過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

「働き方改革」という掛け声とドイツ体験

働き方改革」という掛け声はよく聞く。内容は、「非正規雇用の処遇改善」「賃金引上げと労働生産性向上」「長時間労働の是正」「柔軟な働き方がしやすい環境整備」など。
日本は、とくに「長時間労働」で、サービス残業も多く、労働の生産性が低いと言われる。
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これは36年も前のこと。仕事でドイツの現地法人を担当していたので、デュッセルドルフを訪ねた。
驚いたことはたくさんあった。
職場環境の違い。日本人スタッフの部屋は、まさに日本の会社のありようで、机と机をきっちり詰めて、密なコミュニケーションが取れるようになっていた。でも、いかにも息苦しくて、プライバシーがない感じ。
ドイツ人スタッフの部屋に行くと、机の配置はバラバラ。一人ひとりが壁を背にして、机の周囲には観葉植物をたくさん置いて、森のなかに暮らすように仕事していた。さすがゲルマンは、森の民と感じた。
さらに、休暇のとり方だ。
ある社員は、夏休みの長期休暇をとるという。スウェーデンでヨットをつくり、それに乗って帰ってくるので一ヶ月間休むのだと言っていた。なんともうらやましかった。
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ドイツでは、労働時間の基準が厳しく、土曜日の14時から日曜日は、働いてはいけないという。なので、ほとんどの店が14時以降は閉まる。買い物は土曜日の14時までに済ませ、あとはウィンドウ・ショッピングとなる。
ところが、日本人スタッフは、なにかとたくさんの仕事を抱えていて、土日の休日出勤はあたりまえ。ドイツ労働基準監督所みたいなところが目を光らせて、注意勧告されたという。しかし、仕事がたくさんあるので、みな休日出勤せざるを得ない。
そこで、行政には「日本人は休日といっても、行く所もないので、こうして仲間が集って語り合いをしている」ということにしたと言っていた。
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ぼくも当時は、毎日が残業。いつも深夜の最終の電車で帰ったりしていた。残業は月に100時間や200時間なんてこともあった。
しかし、残業の申請は40時間で、残りはサービス残業。残業が多いのは、能力が低い、効率が悪い、段取りが悪いと言われるのが嫌だったからだ。
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好きな仕事であったり、自分で経営するようなことになれば、どんなに深夜になろうと、さほど疲れることはない。
しかし、サラリーマンの仕事は、管理され、上からの評価を気にするところがあり、そのあたりはかなりのストレス。
結局、サラリーマンはやめてしまって、自分の好きな世界を探し求めることになったのだが。
食っていくには、努力、運、人脈、ワザ、いろいろと総動員しなくちゃいけない。なにより、「自分が好きなことはなにか」─そこがみえないので、苦労したのだった。