過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

つぶれることの一つは「ボタンのかけ違え」だ

手を尽くし、一つひとつ問題をクリアした。「さあ見通しがたった。これから」という時に、つぶれるってことがある。そのたびに、学びにはなる。けれども、学んでばかりでカタチにならない人生も困る。

つぶれることの一つは「ボタンのかけ違え」だ。しっかりとボタンをかけていた(と思っていた)。さて、かけ終わった。じつは、一番目のボタンがかかっていなかった。あるいは、ズレていた(インドネシアハラール食品加工場の件など、まさに)。
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今回のケースは、ある事業所の建物、設備、スタッフ「居抜き」で事業譲渡をしてもらう。いわばM&Aのようなもの。その事業は、「けっして儲かりはしないけれども、損はしない」。「やりようによっては、安定収益源になるかも」とみた。

友人とタッグを組んで、この数ヶ月、考えを尽くしてきた。事業主も合意した。法人も設立した。「さあ、稼働しよう。遅くとも秋からは」という矢先であった。
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ところが、一番目のボタンが外れていた。

なぜか。地主が承諾しないのだ。事業所は借地である。建屋の譲渡が決まって、「さあ、名義変更」という段になった。地主は、見知った人でもあり、よく立ち話もする。なので、「ああ、いいよ」と簡単に承諾してくれるものと思っていた。

電話で気軽に「新しく事業を継承するので、これから友人とお訪ねしたい」と言うと、「唐突になんだ!いまの事業主(土地の賃借人)から一言も挨拶がないぞ。いきなり名義変更するというのは、どういうことだ」とお怒りであった。

地主の立場にしてみると、自分の重要度を低く見られた。足元を見られた。なめられた、という思いがあるのかもしれない。そこを甘く見ていた。軽く見ていた。

またぼくは、フランクに話をしてしまうので、それが相手の感情を逆なでしたかもしれない。

地主の承諾がなければ、建物(地上権)の所有権移転はできない(民法612条 大意)。地主の承諾なくして譲渡した場合、地主は賃貸借契約を解除することができるのだ。
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タッグを組む友人は、「名義変更を認めないのは、地主の越権行為だ。裁判所に申し立て、裁判所に地主に代わって名義変更の許可をしてもらう」という戦法をとろうとした。

「借地権譲渡承諾に代わる許可」である。「裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる」(借地借家法19条)。

賃料を下げよと要求もしていない。現状のまま事業継承するわけだ。地主や地域に迷惑をかけることもない。なので、裁判所による許可はとれるはず。

まずは地主に「内容証明」を出す。戦闘モードに入ろうという動きになった。
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いや待てよ。裁判所の許可がとれるのは間違いない。しかし、地主と争うと、感情のシコリが生まれる。後々、厄介なことになりそうだ。なにしろ過疎地の山里のことである。もう少し様子を見たらどうか。それに、裁判に関わると、半年はかかる。……そういうことを、友人に伝えた。

すると事態は一転。友人は「そのようなブレがあるようでは、 これからうまくいかない。じゃあ、この件は白紙に戻す」ということになった。
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ということで、友人は離れて、池谷のプロジェクトとして、地主と交渉し懐柔することにした。裁判所の申立はしないほうがよいだろう。

何事もそうだが、「ピンチはチャンス」。起きてきた厄介なこと、 うまくいかないことは、次の飛躍へのチャンスになりうる。ということで、次の戦略に歩みを進めている。いま渦中。