過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

幣原喜重郎と平和憲法

青空文庫」に、幣原喜重郎の演説内容があった。彼は、平和憲法制定のときの、総理大臣である。
平和憲法は、連合国から押しつけではなくて、日本から提案した。幣原がマッカーサーに対して、日本は戦争をしない、戦力を持たないということを提案した。それでマッカーサーは感激して、いまの平和憲法ができたと言われている。
彼の「新憲法に関する演説草稿」から、一部引用してみよう。
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新日本は厳粛な憲法の明文を以て戦争を放棄し、軍備を全廃したのでありますから、国家の財源と国民の能力を挙げて、平和産業の発達と科学文化の振興に振り向け得られる筋合であります。
従って国費の重要な部分を軍備の用に充当する諸国に比すれば、我国は平和的活動の分野に於いて、遙に有利なる地位を占めることになりましょう。
我々は他力本願の主義に依って国家の安全を求むべきではない。我国を他国の侵略より救う自衛施設は徹頭徹尾正義の力である。
我々が正義の大道を履んで邁進するならば、『祈らぬとて神や守らん』と確信するものであります。
その所謂正義の規準は主観的の独断ではなく、世界の客観的な公平な与論に依って裏附けされたものでなければなりませぬ。これは迂濶な遠路のように見えても、実は最も確かな近道であります。 (幣原平和財団発行『幣原喜重郎』より)
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幣原の盟友・大平駒槌が幣原から直接聞いた話を記録したノートというものがあり、それにはこう述べられている。

幣原:「自分は、生きている間に、どうしても天皇制を維持させたいと思いますが、協力してくれますか」
マッカーサー:「占領するにあたり、一発の銃声もなく、一滴の血も流さず進駐できたのは天皇の力によることが大きいと深く感じているので、私は天皇制を維持させることに協力し、努力したいと考えています」
幣原:「戦争を世界中がしなくなるようになるには、戦争を放棄するということ以外にないと考えます」
マッカーサー:「そのとおりです」
幣原:「戦争を放棄する。世界から信用をなくしてしまった日本にとって、戦争を放棄するというようなことを、はっきりと世界に声明すること。それだけが日本を信用してもらえる唯一の誇りとなることではないでしょうか」

ちなみに、マッカーサーは書簡でこう述べている。
「 戦争を禁止する条項を憲法に入れるようにという提案は、幣原総理が行なったのです。私は総理の提案に驚きましたが、私も心から賛成であると言うと、総理は明らかに安堵の表情を示され私を感動させました。」
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さて、日本は戦力は持たないとしたものの、朝鮮戦争を機に、アメリカの要望に応える形で警察予備隊を創設。そして1954年、自衛隊が誕生した。いまや日本の軍事支出は、世界で第8位である。