過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

宙(そら)となりしひとの遺書

こんなすてきな詩に出会いました。親しい友人の松尾俊一さんの書かれたものです。以下、引用します。

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ある日、福ちゃんは定期検診で引っかかり、精密検査の結果、乳ガンを告知されました。

医者から悪性だとこのまま放置すれば余命3ヶ月、手術しても転移している可能性があり、おそらく長くて6ヶ月か8ヶ月の命と言われました。

でも福ちゃんは手術を拒否し、仕事を辞めて、食事療法をするために私のところに来て一緒に住むようになりました。

空気のいい私のところで、自然の大地のエネルギー、自然の水、自然の空気をいただいて、新鮮な食べ物をいただいて、4年半くらい毎日一緒に農作業をして暮らしていました。

福ちゃんにとっては、最も充実した日々であった事と思います。友人から頼まれて、日々の暮らしの事を毎週のように書き綴った「お日さまいっぱいのワクワククッキング」が福ちゃんの遺稿集となりました。

そして福ちゃんは福ちゃんのいのちを全うしました。

「私が死んだら灰を粉にして畑に撒いてください。」
それが生前の福ちゃんの言葉でした。

福ちゃんに思いを馳せていたら、言葉が詩と成ってやって来てくれました。

「宙(そら)となりしひとの遺書」

私が死んだら・・・

私が死んだら遺骨と遺灰を粉々にして
畑に撒いて下さい
私は大地の養分と成り
根に吸い上げられ、野菜と成って
あなたのいのちの一部と化し
あなたのいのちを共に生きましょう

私が死んだら
遺骨と遺灰を粉々にして
花壇に撒いて下さい
私は土と成り
根に吸い上げられ
季節を彩る花と成って
あなたに慰めと喜びを
もたらすものと成りましょう

私が死んだら
遺骨と遺灰を粉々にして
下の小川に流して下さい
私はホタルの幼虫のエサと成り
ホタルのいのちの一部と化して
あなたに希望の光といのちのはかなさを
伝えるものと成りましょう

私が死んだら
遺骨と遺灰を粉々にして
近くの海に撒いて下さい
私は大海の一部と成り
海藻たちの養分と成って
あなたの食卓に上がりましょう
お魚も食べない
あなたのために

私が死んだら
遺骨と遺灰を粉々にして
風に吹き散らして下さい
私は風に乗ってどこまでも
あなたの後を追いかけましょう
それは肉体の中にあるうちは
決して叶わなかった夢のまた夢

私が死んだら
遺骨と遺灰を粉々にして
昼のお空に撒いて下さい
私はやがて雲と成り
恵みの雨と成って
あなたと全ての生きとし生けるものたちの上に
降り注ぎましょう

私が死んだら
遺骨と遺灰を粉々にして
夜の宙(そら)に撒き散らして下さい
私は天の星層と成り
遥か彼方の天上界より
あなたを見守る者と成りましょう

そこが私の来たところ
そこが私の居るところ
そして私は
いつもあなたと共に在る

愛の讃歌 般若心経のこころで 生きる」(松尾俊一著 創芸社)より

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松尾俊一さんは、12月1日、「田舎暮らし雑談会」で、自給自足の田舎暮らしのお話をしてもらいます。テーラワーダ(南方仏教)での出家体験、クリシュナムルティとの出会いなども、語ってもらいます。