過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

なにごとであれ、真実を述べること。ごまかさないこと。理由を事実のように言わないこと。

「アメフトに限らず、自分の意志に反することはやるべきではないなと思いました」

日大のアメフトの記者会見でかれは、そう言っていた。自ら記者会見を開いた。顔出し、実名公表、テレビ生中継というものすごいプレッシャーだったろう。しかも、民事や刑事の事件になる可能性もあるわけだ。

事実だけを延べ、記者から誘導質問されても、大学や監督もコーチの批判をしなかった。誰のせいにもせず、誰を責めることもせず。恨みも怒りもあらわさず、ただ自分で責任を負っていた。20歳。冷静で真摯な態度に感銘した。

その背後に、有能な弁護士を感じた。弁護士は「みなさんご承知のように、これは民事・刑事事件のおそれがあるので、そういう質問は控えてください」と、記者に対して牽制をしていた。

いろいろな記者会見を見てきたが、失敗する多くは、単独で行うケースだろう。記者からのひっかけ質問、怒りを起こさせるような質問に挑発されてしまい、あわてふためく姿が映し出されてしまう。

ところが、有能な弁護士が横にいると心強い。彼が全体を仕切ったり、不利な弁明になりそうだと牽制することができる。

かつて、出版社が自己破産したときに、債権者の一人として債権者会議に出たことがある。債権者は300人ほどいた。場所は、霞が関弁護士会館。

ふつうは、債権者が「どうしてくれるんだー」「金返せー」という修羅場になるのだが、弁護士会館ということもあり、弁護士が上手に仕切っていた。

破産した社長はというと、うつむいて、泣きそうにしてすみませんという顔をしていただけ。あとは弁護士が「はい、次、はい次」「はい、その質問は、ここでは控えください」みたいに仕切っていた。それで、債権者たちは気勢を削がれてしまった。

なるほどなあ、こうして弁護士に仕切らせると、うまく乗り切れるものだなあと妙に感心したものだった。

日大の学生の記者会見は、うまく乗り切ろうというものではなく、真摯に自己の本心をそのまま伝えていたと思う。なので、揺らぐことなく誠実に伝わったと思う。

なにごとであれ、真実を述べること。ごまかさないこと。理由を事実のように言わないこと。それがたいせつと感じた。大人になると、そこがとても難しくなる。自分はごまかし、たくさんしているなあと反省する。