企画、執筆、編集、デザインも、冊子やパンフ、新聞の制作、印刷・製本、さらには販売のルート作りもするというのが、いちりん堂の仕事。
原稿をもらう。読みやすいように直す。もの足りないときには、電話インタビューして代筆したり、書き加えたりする。小見出しをつける。脚注をつける。たいせつな所には強調ゴシックにする。
写真を配置する。校正する。タイトルを考える。カバーのデザインを考える。配色する。加工する。著者とやり取りして確認していく作業を重ねる。ゲラをつくる。版下をつくる。
あれれ、ページがとんでいる。写真のキャプションが間違えていた。奥付、これちがうよ……。もうこれでいい、完了。と思っても、やはりミスが出る。
印刷屋をきめる。紙は、クリームキンマリ、90キロ。表紙は上質紙180キロ、マットPP加工みたいな指示。綴じは中綴じとか無線綴じとか。
版下をPDFのデータにして印刷会社に送る。あとは、まつだけ。しかし、なかなか緊張する。
パソコンでつくってうちのプリンタで打ち出されたものと、できあがってきたものとは、やはりちがうからだ。色がちがう、活字の濃さや太さがちがう。印刷会社によって、紙質がちがう。印刷のノリが違う。字の濃さが違うこともある。
微妙なところでちがうだけで、致命的なことにもなる。ちょっとした勘違い、やりとりのミスもこわい。
こうした作業は、何年もやっているし、作った本は50冊以上なる。しかし、やはりときどきミスが出たりする。まちがえると、刷り直し。利益が吹っとぶ。かつて奥付の著者の名前を一字間違えて、全部刷り直したことがあった。
それでも、こうして全工程にかかわるのは、たのしい。ちゃんといいものをつくっていけば、また次につながる。収益にもなっていく。
まあほんとうにおもしろいのは、自分で書いて出版する、自分のリスクで本を出して販売するのが、おもしろい。しかし、それはリスクが大きすぎるので、資本と人材と機会があれば、だ。