過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

西浦田楽(にしうれでんがく)の出版事業の企画

今朝は、ポーラ伝統文化振興財団に、西浦田楽(にしうれでんがく)の出版事業の企画書作り。

西浦田楽は、浜松市天竜区町の水窪(みさくぼ)町、西浦地区に伝承されている祭。なにがすごいかというと、1300年にもわたる歴史がある。能や狂言の源流とされ、国の重要無形民俗文化財の第一号に指定されているのだ。かの折口信夫(おりくち・しのぶ)博士が絶賛している。

けれども、この祭はよく知られていない。観光目的で行っていないからだ。フェスティバルのような人賑わいの祭ではなく、月が出て月が沈むまで夜通し行われる神事である。そのため、人を相手にしてはいない。神に相対する思いを大切にしている。標高が高いうえに、2月ころに行われる。松明を掲げて行われる。「寒い・眠い・煙たい」という祭だ。

祭に接した多くの人が驚く。「あんな山里にそんなに古い歴史を刻んだ祭りがあったのか」「祭とは、神事なんだ。神と相対時して継承された荘厳なものなのか」「世界に誇る日本の古典芸能である能や狂言の源流とは、知らなかった」と。

そんな貴重な祭であるが、その継承はなかなか難しい。まず祭を支える60世帯ほどの西浦の集落は、過疎高齢化が著しい。この地域(浜松市天竜区水窪町)では、高齢化率は 45%を超える。この40年の間に、人口減少率は 50%を超えている(過去10年で30%近い)。

田楽の舞手は、父子相伝である。しかし子どもたちは、働き口がないのでまちなかに行き、地元には定住できない。そのために、舞い手の継承も難しくなってきている。観光を目的としているわけではないので、祭のための衣装や道具の費用の捻出もたいへんだ。

この貴重な祭のことを知ってもらいたいと思い、わかりやすく読みやすい書籍にしようと思い立った。