過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

「出火責任法」と「自己破産」について

人に迷惑をかけたら、償うこと。損害賠償の責任があることが民法の原則だが、例外がある。すなわち、「公共の福祉」のために、それは制限される。

で、ぼくの友人・知人の間に起きた最近の事例が二つ。そのひとつが、親友がもらい火によって全焼。しかし、出火元の責任を問えないというケース。

「失火責任法」という法律があって、出火元が他の家を延焼させても、その責任を問われない。これは、木造が多い日本では、延焼の被害が甚大になって、出火元は責任を負えないというのが立法趣旨だと思う。

出火元に多額の保険金がおりて、そのお金で全焼させた家に対して償うことは可能なのだが、法律は責任なし、としている。「公共の福祉」のためといえるかどうか、このあたり、問題はあると思うけど。

もうひとつ。これはきのうの事例。知りあいの料理屋が自己破産の申請をした。裁判所は受理したので、破産は確定となる。そこは木造の大きな料亭、2階建ての重量鉄骨の店舗、10棟のロッジがある。なんとかすべてを売却できる道はないものかと、この一年のあいだ模索していた。活用してもらえそうな人も何人か紹介した。だが、過疎の山里では、買い手はない。活用する道もない。もう店はたたむというので、そのまま風化していくしかないか、と思っていた。

そして、この突然の自己破産。多額の借金があったのだろう。あるいは、土地の賃貸契約を完了するときには、借地の上に建てていた建築物は更地にしなければならない。その費用は、ざっと一千万円以上。それを逃れるためであったろうか。

ともあれ、自己破産すれば、すべての債務がチャラとなる。借金の取り立てを受けることはない。債権者は泣き寝入り。これは、破産者の経済的再起・厚生を目的としている。そのためには、債権者の追求を遮断する必要があるからだ。これも、公共の福祉によって制限されるというケースということになるか。