過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

こんな禅僧の本を作り始めるところ

いま手をつけようとしているのは、禅僧の本▲この方は、京大の博士課程で、湯川秀樹博士のもとで素粒子論を学んでいた。名古屋大の後輩にもノーベル賞を受賞した益川敏英さんがいる▲一緒に昼食をいただきながらのインタビューだったけど、ぼくにはまったく歯がたたない▲食事が運ばれる前の雑談だけで、こんな言葉が次々と。その走り書きのメモ。

関孝和をしっているか。オイラー数の発見。日本で新しい暦。湯川さんは人の真似するな、自分しかできないことをやれと言われた▲坂田理論。クォーク電荷。1が2になり、2が3になる。それで万物ができる。アイソスピン。中谷宇吉郎。天はサイコロを好まない。アインシュタイン。局所場理論▲入れ物、量子力学。ヒックス粒子。パウリ。ハイゼンベルグ。非ベクトル空間。パスカル。三角形の内角180度の証明。では、二角形が存在しないのはどうやって証明したらいいのかと考えた。リーマン幾何学

……などという話が、次々と出てくる▲そして、食事だ。食事の祈りのことばが、ものすごい。天と地と、諸仏、神々、聖霊、あらゆるものたちに祈りと感謝を捧げる。その響きがすごい▲一緒にお経を読ませていただいたが、これがさらにものすごい。尋常なお経の読み方じゃない▲「まさにそのとおりだ」「そのとおりだ」と全身全霊で確認しながら、納得しながら読んでおられる。ほとんどのお坊さんて、お経の内容よりも、その響きというか、韻というか、音の流れをここちよく読む▲この方の読み方は、まったくちがう。内容を理解して、心から納得、あるいは宣言として読んでおられた。こういうお経の読み方ってあるんだ、と驚きだった。

それから、お袈裟の縫い方とか作務衣の染め方がすごい。道元禅師は袈裟についてはものすごく大切にされているが、その方も自分で縫っておられる。さらに作務衣も薄墨で染めておられた。そうした一つひとつがすごいなあと感心したのだった。そんな方の本作りが、これからはじまる。