過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

鈴木重子さんから聞いたアレクサンダー・テクニックのこと

ジャズボーカリスト鈴木重子さんから聞いた話。ふんわりした話し方で、温かい波動が伝わる。とっても好感がもてる▲かのじょは、よく声を響かせるためにいろいろなメソッドを探求している。そのひとつが、アレクサンダー・テクニック。

このメソッドは、なにかあたらしい訓練とか動きを加えるというものではない。むしろ、不必要な動き、反応を取り除いていくことにある▲人は、無意識的な習慣や癖のために、何かをしようという際に不必要な反応を生じて緊張が生まれる。その反応に気づくことで、緊張を除いていく方法。行動するときの自分の自動反応に気づくということがポイント。

このメソッドを開発したのは、フレデリック・マサイアス・アレクサンダー。かれは、俳優だったが、突然、舞台上で声が出なくなる。かれは、日々、鏡の前で声を出す瞬間を微細に観察していく▲声を出そうと思った瞬間、その「声を出そう」という意欲によって、意識せずに首の後ろを縮め緊張させていたことを発見する▲このため頭が重たくのしかかり、声帯を圧迫していた。首が楽で、頭部を軽く脊椎の上でバランスを保っていれば声が楽に出ることに気づいた。

鈴木重子さんは語る。よく声を響かせるには、〈あたま〉と首の関係がたいせつ。頭部を軽く脊椎の上でバランスを保っていれば声が楽に出る▲〈からだ〉そのものが楽器。空中に釣られた鐘を打てばよく響く。けれども、どこか押さえられていたら響かない。そのように、自分の体も糸に釣られた楽器のように思うといい。

これらは声楽のいわばテクニックだが、つぎのことばが深かった▲たいせつなのは、「学び方」を学ぶということ。身についてしまったパターンを手放していくこと。いわば別の神経系統をつくっていくこと▲環境は瞬間瞬間に変化していく。自分もその時その時に、変わっていく。だから、これが「正しい」というものは、ないのだ、と。