過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

母の好きな曲を鉄琴でなんども演奏してきた

嵐がやってくる。さきほど、母の見舞いに行ってきた。もうほとんどなにも食べない。点滴を挿す血管もきびしくて針が外れてしまうという。ぼくが来たことはわかっていると思うけど、反応はあまりない。目も開けない。体温もずいぶんと低い。ただ寝息の音だけが聞こえる。

でも、話しかけると閉じたまぶたが動く。ちゃんと心の奥のほうでは分かっているのだと思う。頭に手を当てて、耳元でゆっくりとお経を唱えた。「夏も近づく八十八夜〜」という母の好きな曲を鉄琴でなんども演奏してきた。帰ってきたら、ますます雨が激しくなってきた。