過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

山里の出会いの一日

山里を150キロ以上も移動して、人と出会いの多かった一日だった▲朝から、いまわがや滞在している京子さんと小林君と一緒に、はるのケアセンターに母の見舞いに。母はもうすっかり枯れてしまっていて、ほとんど食事をしない。ハーゲンダッツのアイスクリームをスプーンで、5口くらい食べてもらう▲さいわい頭はしっかりしていて、かすかに話はできる。ぼくがハーモニカで、抒情歌やアイルランド民謡などを演奏すると、いいねえと喜んでくれた。きょうとどこへ行くんだい? うん、仕事で山奥に歌舞伎の取材だよ。ああ、そうかね。というような会話。

佐久間町浦川歌舞伎を観に行く。冬のイベントの取材を兼ねてだ。200年近く続いている農村歌舞伎で、所作も舞台の描き割りも、たいへんレベルが高い。太棹の三味線と義太夫もホンモノ。舞台の幕間の準備の最中、保存会の会長に挨拶して、トークイベントのお願いをしてくる。

近くで見つけた「あい川」というレストラン。川が流れ湧き水が流れ、モミジや桜の巨木に囲まれた幽玄な佇まい。川音を聞いて桟敷席のようなところに坐っているだけで、半日は過ごそう。毎日でも訪れたい空間だ。定期的にコンサートもひらいている。学校の先生を退職したご夫婦が2年前につくられた。奥さんは人形作家。

そして夕方。二俣町で中山間地の定住促進会議を推進している、ミナの森プロジェクトと元気里山の会議に仲間と出席。山里の映画作りのこと、自転車競技のこと、山里の大同窓会のこと、主宰者の上嶋さんの企画は次から次へと出てくる。ぼくは豪華なお弁当をいただいて、ほとんど雑談を盛り上げた程度だったけど。

で、食べ逃げをして次に森町だ。三倉地区でまちづくりを推進している創藝舎の入沢さんのところの会議。閉店して放置されている道路沿いの店を借りて、産直野菜、加工食品、石窯でパンなどを販売する。みんなで力を合わせて、ここの店を拠点にしてまちづくりをしていこうという趣旨。

木工作家、農業、林業、学者、ウェブテレビの主宰者、いろいろな方たちがあつまる。こうした異業種の出会いはとても貴重なこと。都会の出会いはわりと一面的になるけど、山里の人の出会いは、日常の暮らしのレベルでの交流があるので、かなり濃密だ。いずれわがやの納屋も片付けて、そこで異業種交流会をつねにやっていきたいものだ。