過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

アドレナリン  身体は自動機械みたいものか

やっと腰痛が治ったら、こんどは虫歯だ。山里に越してから、虫歯をずっと放置していた。いい医者がないかなあ、そのうちに……と探しているうちに、4年もたった▲奥歯がグラグラしてきて、仕方なく歯医者に。近くにも歯医者はあるけど、そこの医者がいいからというので、車で往復3時間もかけて出かけた。

麻酔をかけて抜くだけのことだが、アレルギー反応のある人は要注意と歯医者はいう。ぼくはこの数年、帯状疱疹やら日光過敏症やら蜂に刺されて異様に腫れたりとか、アレルギーが出てきている。歳をとって免疫力が低下してきたということだと思うが、ちょっと心配になった▲左腕に血圧計、右指に血中酸素濃度と心拍数をカウントする機械をつけて、麻酔注射。過去に何度も体験しているので、慣れていることだが、今回は心臓の動悸が急激に速くなって気分が悪くなった。脈拍は、1分間に60が、90に。血圧は、99(上)が120に。麻酔によってこんなに〈からだ〉が反応するは初めてのことなので、驚いた。

どうして反応するかというと、血管収縮薬のためだ。麻酔薬を歯茎のところにとどめ、麻酔が拡散しないように血管収縮薬が使われる。この薬はエピネフリン。いわゆるアドレナリンだ▲アドレナリンが増えると、交感神経は急激に興奮する。身体が臨戦態勢に入るのだ▲たとえば、猛獣に出くわしたとき、逃げるか戦うか、身体は反応する。戦うためには、瞬時にエネルギーが湧いてきて集中しなくてはならない。走って逃げるには、急激な運動が必要。心拍数は一気に増える。手足から汗がでる。

ところで、日常の中で、怒りが噴出しそうなとき、似たような症状になると思う。瞬時に動悸は速くなる。呼吸は荒くなる、筋肉は緊張する、〈からだ〉からエネルギーが湧いてくる。このエネルギー感は、快感ではある▲アドレナリンが出てくるからだ。そんな身体の反応が、歯医者の椅子に座っているときに、突如、起こるのだから驚いた▲人間ってここをこうすればこうなる。こういう薬を与えると、こう反応する、というふうに、なにか自動機械みたいなものだなあと感じた。