過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

数学者の森毅先生のこと

20年日記をFileMakerで書いている。去年の今日は、一昨年は、その前は、と読み返す。ちっとも成長してないのがよくわかる▲ところで9年前のきょう、数学者の森毅先生にお会いした。京都の「こい茶屋」という雅びな茶店で取材さてせもらった▲まことに飄逸な人で、芝居のことやら、数学のことやら、4時間くらいおもろい話をお聞きした。歌舞伎、三味線、宝塚歌劇団は在学中より熱中していたそうだ。その時の聞き書きから……。

ほんとうに大事なのは学力やない。行きづまっても、なんとかしてしまう能力が大切なの▲賢(かしこ)に教わるぐらいアホでもできるわ。アホから教わるのがほんまの賢(かしこ)やね。あれかなあこれかなあと考えるなかで、賢くなる。結論だけを教わっても賢くならへん。迷うのがいいんでね。間違えたってええやんか。他人から結論を出してもらって安心したがるのは、いちばんつまらん▲「分からないからこそおもろい」——そう考えたほうが、人生は何倍も豊かになるんとちゃうか▲年とると、いまさら「こうあらねばならん」と主張することもないし、世の中が変わっていくのを見るのは楽しいもんだね。いろんなことが変わりながら動いていって、うまいこといくんやな。

先生は、一人暮らししていた。お会いして五年後、自宅で料理を作っていた最中に、火が着ていた衣服に燃えうつって大火傷の重傷を負って、その年に亡くなられた。合掌。