過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

田舎暮らし 地元とのつきあい

田舎暮らしをしようとして、みんなが恐れるのは、地元との付きあいだろう。なにしろ山里は人のかかわりが濃厚だからね。毎月の集会、草刈やら、井さらい、祭りなど、顔を付き合わせることも多い▲どこの世界もそうだけど、みんながいい人ばかりじゃない。こっちが挨拶しても、あーとかうーとか唸るだけ、あるいは難しい顔して無視する人もいる。いろいろと噂を立てられることもある。

こういう山里は、先祖からの付き合いが濃厚だ。親の親のまた親のそのまた親の……という世代にわたってのつきあいだから▲幼なじみたちが、そのまま50年も60年も仲良く暮らしてきている。また、かなりの人が親戚同士で、80になっても、よっちゃんだのまー坊だのと、子供の頃の名前でたがいに呼びあう。

そういうところに、いきなり住むわけだ▲何十年暮らしても、それは「余所者」ってことになる。話題も合わないことも多い。あの人がどうした、この人がどうしたって話になったら、こちらは知らないんだから話には入れない▲ということで、なかなかうんざりのことだってある。でもこれとて、あ、どうもーって程度で、そこそこ仲良くすればいいだけのこと。ベタッと親しく付きあう必要はないと割りきる。

ま、わずらわしい付き合いもそこそこにして、回遊魚のように山里をめぐっていると、おおーすごいという人に出会うこともある。人生の達人、ものづくりの大家、歴史の生き証人みたいな人がいたりする▲都会の付きあいだと、喫茶店で話すというレベルなんで、その人の暮らしぶりまではわからない。山里暮らしは、暮らしのリアリティがもろに出てくる。その人のすまい方、家づくり、畑や大工仕事、家族のつながり、いろいろとドラマがあって、学ぶことが多い。得難い友人も増えてきた。