過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

99歳で亡くなったおじいさんのこと

草取りをする認知症のおばあちゃんの話の続き──。このおばあちゃんの夫は、昨年亡くなった。99歳だった。まったく病院に行くこともなく、最後まで自宅で過ごした。そうして、眠るように息を引きとった。▲これはその半年前に、お訪ねしたときに撮らせてもらった写真だ。すでに半分、あの世に行っているような雰囲気であったが、話はちゃんと伝わっていた。

竹細工の名人として有名で、籠を作っていた。シベリアにも抑留されていた。馬の世話をする係だったために、生きのびられたとも聞いた。お元気なうちに、いろいろな体験を聞きたかったな。▲このおばあちゃんは、夫がシベリアから船で帰ってくるときに、なんとしても港に迎えに行きたかった。けれども、嫁いだ先の家では、行かせてもらえなかったと語っていた。 

で、ここの嫁さん(といっても60を超えているけど)。99歳のおじいちゃんを看とり、そしていま認知症の92歳のおばあちゃんの世話をし、ときに夫からはガミガミ言われている。▲「よくやっているよね。たいへんだねー」というと、「逃げ場がないのよ」とこぼしていた。でも、笑顔で「修行の日々だ」とも。

この山里の奥さんたちは、たいがいは舅と姑の介護を経験している。でも、いつか自分がそういう事になったとき、介護してくれる息子や娘たちは地元にいない。といって、ひとり暮らしはいつまでできるか。▲いくらわが子でも、世話になるのはこころ苦しい。住み慣れた山里が好きだから、都会の狭いマンションで世話になりたくない。ピンピンころりの生き方を願っていると笑う。