過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

ベナレスで死を迎える

インド人から聞いた死の迎え方の話です。▲インド人の理想的な死の迎え方は、聖地ベナレス(バラナシ)で死を迎えること。そこには、聖なるガンジス河が流れている。そのほとりで息を引きとり、遺灰を川に流してもらうことが、最高の死の迎え方なのだ。遺灰がガンジス河に流してもらったら、天国にいけると信じている。

人々は自分の死期をさとると、みんなに最後の挨拶をして、聖地ベナレスに向かって旅立つ。ベナレスでは、死を迎えるためのアシュラム(宿坊)がある。そこでは、宿代も食事代もいらない。それらは、お金持ちの人たちがお布施している。ただ、遺体を焼いてもらう薪代だけは、各自、用意している。

体が弱っていっても、お世話をするボランティアの人たちがいる。あるいは、一緒に暮らしている中に丈夫な人がいたら、弱い人の介護をする。▲みんな聖地で息を引きとるという同じ目的のために来ている。今日はこの人の順番だ。明日は、あの人だ。そして、次は私の順番と。みな死という目的を達成するためにやってきているのだ。

ベナレスでは、毎日、盛大なプージャ(供養の儀式)が催され、日夜、お坊さんたちのお経が聞こえ、人々の祈りの声が響いている。▲そういうところで、静かに死を待つのは幸せなこと。そして、死ぬということは悲しいことではなくて、ああ願いがかなった、よくやった、ということなのだ。

インド人にとって、死は無に帰ることではない。前世があって、今世があって、来世がある。人生に〆切はない。来世も続くと信じている。▲だから、死ぬということは、ちっとも怖くない。ベナレスで死を迎えることは、無事に天国にいけることだと信じているので、死はめでたいことなのだ。