過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

郷土史家を訪ねた

先日、郷土史家を訪ねた。木下恒夫さんという。地元の歴史について20冊も自費出版でされている。図書館でこの方の本を見つけた。▲古代史からの資料もきちんと踏まえておられて、感心することが多かった。こんなすごい人が地元にいる。高齢のようだから、お会いできる時に会っておかないと、いつなんどき病に倒れたりするかもしれないしと思っていた。

いきなり電話してお訪ねすることにした。犬居城というあるい山城の近くの小高い丘の上にご夫婦でお住まいだった。▲お会いするとわたしの年を聞く。59歳というと「おーー、若いなあ」としきりに感心された。聞けば79歳になられる。あたりまえだけど、80近い人からみたら、ぼくは随分と若いんだ、若者なんだなあ……。

ぼくはこういう方に会うときには、いきなりトップギアでお話を聞くことにしている。著作の内容のことから聞いてみた。間髪入れずに嬉しそうに滔々と語られる。村の成り立ち、林業の歴史、お茶の歴史、気田川にかかわる仕事人のこと、農機具のこと、地元の人間のこと、とにかくなんでも詳しい。▲とりたててすごいのは、実地に現場の人に会って、その話をまとめられていること。本を書くときには、100人くらいに会って、聞いて書くという。「ぼくは警察官だったからね。警察の仕事というのは、とにかく人の話を聴くことなんだ」といっておられた。

いろいろと過去の政治的な事件やら戦後の隠匿物資やら謀略みたいな歴史も、教えてくれた。「山里の人間というのは、いいのもいるけど、悪いヤツもいるんだよ」と言われると、すかさず奥様がよこから「悪いヤツの筆頭はあなたよね……」とツッコミを入れていたのが、おかしかった。▲5時間余もお話をいただいて、まったく話に無駄がなかった。こうして、教えていただける先生がひとり増えた。まことにありがたいことだ。