過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

ある病院での取材

医学雑誌の取材である病院を訪問したときのこと。▲神経内科の先生に、若き研修医のために神経内科についての仕事の醍醐味を語ってもらうという趣旨だった。その病院は大阪の梅田駅の近くにある歴史のある大病院。受付に名前を記載して名札をもらい、先生の研究室に向かう。

階段を歩いていると、向こうから横山やすし似の白衣の初老の方が歩いて来る。私を見るなり、「お前ら! どこの泥棒ネコだ!」と一喝された。▲これには、驚いた。いきなり「お前ら」呼ばわりで、しかも泥棒ネコとは……。「私たちは、◯◯先生の研究室に取材で参るところです」というと、「なんだ、本屋か」と一言だけ。▲まあ、さすがに大阪という感じで、陰険じゃなくて、あけっぴろげでどこか憎めない人柄を感じたけども。

いったいなんだ? と思っていると、その先生の研究室の前には、スーツ姿で緊張した雰囲気の人たちが10数名が直立不動で立っていた。すこし異様な雰囲気がただよう。でも瞬時に、なるほどと合点がいった。▲その先生は、外科部長ですごく偉い人みたい。そして、スーツ姿は、製薬会社の営業マンだ。先生の一存で薬品の売れ行きがちがってくるので、すごく緊張している。そうして、私たちは、その薬品メーカーの製薬会社に間違われたのだ。

こういう医者って権力があるんだなあと感じた。さらに巨大病院、さらには一流大学の教授ともなれば、ものすごい権力があるにちがいない。▲いまは研修医制度が変わって、かつてほどでもないが、以前なら、研修医の配属やら部下の配属やら、人事権を教授が持っていた。まさに「白い巨塔」の世界だ。▲おんなじ大学教授でも、文系と理系ではまったく予算が違う。まして医学部となると、ケタ違い。そして、人事権やら薬品メーカーやら、医療設備の導入などが、先生の一存で決まるとなると、それはそれは天皇のように営業マンは敬うことだろう。▲こうした権力を持つと、ついつい人に対してぞんざいになりやすいね。権力もなくて威張る相手もないけど、私も気をつけねば。