過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

カルカッタの夕暮れ

夕方、通りに出ると、路上で寝ている者たちがごろごろといる。井戸水の蛇口をがちゃがちゃと音をさせて、少年たちが体を洗っている。

赤ちゃんを抱えた乞食が「この子にミルクを」とすがってくる。人力車の車夫が「安くするぞ」とやってくる。「マナリのハシシーだ、質がいいぞ」と男が売りにくる。ターバンを巻いたシーク教徒の男が「タクシーはどうだ」と声をかける。

ここは、インドのカルカッタのサダルストリートの一角。わたしは救世軍のゲストハウスに滞在していた。野戦病院のように汚いベッドがいくつも置いてあるだけの宿泊所だ。一泊50円となにしろ安い。救世軍の経営なので、セキュリティーはしっかりしている。世界のバックパッカーが利用するので、出会いの場としてもなかなか楽しい。

通りで次々と声をかけてくる車夫や乞食や物売りを適当にあしらって、細くて暗い路地に入る。三、四十人の男たちが大きな声で歌っている。夕方のプージャ(礼拝の儀式)なんだろう。神さまの像に礼拝している。ドゥルガーという女神だろう。

こういう祈りの場に入ると、ワクワクする。その輪に入って、歌の響きと祈りのエネルギーを味わった。男が、ブラサード(神さまに捧げたお菓子のお下がり)をくれた。銀箔でつつんだ甘い蜜の入った団子だ。

夕方になると、通りのあちこちでこうした儀式が行われ、祈りの歌が響きわたるのだ。