過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

ダージリンへの旅(5)──徒歩でヒマラヤを越えてくる難民たち

人民解放軍の侵入によって、チベット文化は破壊されつづけた。中国によるチベットの弾圧のことを思うと、いつも胸が痛む。

6千以上の寺院はことごとく灰燼に帰した。それは全寺院の9割にも及ぶ。仏像、図像、経典、美術品、法具などは略奪や焼却に遭った。僧侶は還俗させられ、殺生をもっとも禁じてきた僧侶に、家畜の屠殺の強制労働をさせたりした、と聞いた。

いまはチベット語は公式の場では使えず、学校教育でも行われない。チベット固有の文化は迷信で遅れたものとして「優れた高度な?」漢化教育が行われているのだ。
不当逮捕や拷問、検閲などの人権侵害はいまでも続いている。この50年間で非業の死を遂げたチベット人は、120万人以上ともいう。

亡命する人々は後を絶たない。インドのダラムサーラには、チベット亡命政府の拠点があり、8,000人の難民が暮らしている。世界各地の亡命チベット人は17万人ともいう。

多くの場合、着の身着のまま徒歩で国境を越えてくる。ラサから直線距離で1400kmもある。その間には、6,000m級のヒマラヤ山脈がある。つかまったら半永久的に牢獄だ。国境警備兵に情け容赦なく撃たれることある。凍傷にかかって指や足を失ったり、途中で凍死する人も数知れずという。

なかには、年端のいかない子どもたちもいる。チベット文化を守っていってほしい、という親の切実な願いから国境を越えさせるのだ。