過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

インドの遊行者たち(2)──百万人ものサドゥたちが

サドゥという裸形の修行者が百万人が、どどどーっと押し寄せる。その群れに出くわしたことがある。

それは、北インドの神の入り口という名のハリドワールという町。クンブメーラ という十二年に一度の大祭のときのことだ。

この満月の夜にガンジス河で沐浴すると、あらゆる悪業が浄化されるという。山中で暮らしているサドゥたちがいっせいに集まる。観光客も入れると、数百万人もの人になる。
長い髪をぐるぐるに束ね、胸まである髪をたくわえた仙人のような者ばかり。虫除けの灰だけを塗っている裸形の者もいる。持ち物は、衣一枚と杖くらいのもの。寝るのは樹の下、川の水を飲み、食は木の実や人びとのお布施である。

彼らが滞在しているテントを訪ねてみると、「入れ」と手招きされた。座を与えてくれ、「食べろ」とチャパティをつくってくれた。ふいに訪れた外国人の私であるが、「どこの誰だ」「なにしに来たんだ」とか、まったくどうでもいいようだった。

いろいろな苦行者がいた。20年間も片手を挙げっぱなしの者。片腕は枯枝のように細く、爪はカールして数十センチになっている。10年間も寝ていないという者は、樹から下げたロープによりかかり揺れている。何十年も一言も喋らないという行をしている者もいる。

見た目は恐ろしげな彼らだが、孤高であり、なんとも屈託のない穏やかな目をしていた。